東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記「真冬のアイスランド」

02. ヨン・シグルズソンとアイスランド独立運動

朝の散歩で見かけたヨン・シグルズソンの像

旅の二日目の朝は9時に起床。ゆっくりとベッドから出た。が、完全に寝不足。なんせ昨夜はオーロラを見るために深夜に真っ暗な野原に立っていた。ホテルに戻って部屋のベッドに潜り込んだのが2時だったよね。しかし、その後もホテルの周囲は大変だった。新年を祝う若者たちが花火を打ち上げ、唄を歌って大騒ぎを続けたんだ。おかげで深夜に何度も目が覚めてしまった。

寝不足でもお腹は空く。9時からはホテルのレストランで朝食。大好きなロンドンイングリッシュ・ブレックファストとはいかないけど、グリルしたベーコンとソーセージ、生のトマトと干しイチジク、そして牛乳という食事に満足したね。(イングリッシュ・ブレックファストならば、トマトは焼いてあるけどね。)

硫黄の匂いの風呂につかり、厚着をしてホテルの周囲の散歩に出発したのが10時半。ようやく明るくなってきたからね。なんせ高緯度にあるアイスランドだから、この時期には太陽が出ているのは 4時間ほど。明るくなるのは遅いけど、暗くなるのは早い。一日がとっても短いわけだ。

ホテルの目の前には公園があった。その公園で撮ったのが下の画像。意外に雪は無い。でも、地面が凍結しているのがわかるよね。雪は無くても気温はとっても低いんだ。

アイスランドの首都レイキャビクに立つ独立運動の指導者ヨン・シグルズソンの像

ところで、上の画像の奥の建物の手前に銅像が立っているのが見えるよね。誰の銅像なんだろうか。その周囲を探して歩いたんだけど、何の説明も無かった。が、気になる。旅の後で調べたところでは、この銅像の人物はアイスランド独立運動の指導者ヨン・シグルズソンだった。

アイスランドの四方を守るドラゴン・巨人・牛・鷲

9世紀にヴァイキングたちが植民してアイスランドの開拓が始まったんだけど、彼らの故地である北欧の王様がアイスランドに対する支配を強めようと魔法使いを送り込もうとしたらしい。魔法使いは鯨に姿を変えて島に近づいていった。

ところが、アイスランドの四方はドラゴン・巨人・牛・鷲によって守られており、魔法使いは島に上陸することができなかったんだそうな。下の画像は右上から時計回りでドラゴン・巨人・牛・鷲を刻んだアイスランドのコイン。ちなみに、アイスランドはユーロを導入しておらず、アイスランド・クローナが流通している。

アイスランドの四方を守ると信じられていた鷲・巨人・ドラゴン・牛を刻んだコイン

中世のアイスランドの人々はドラゴン・巨人・牛・鷲が島の四方を守ると信じて致そうな。ところが、西暦1262年にはアイスランドはノルウェー王、後にはデンマーク王の支配下に置かれたんだそうな。

アイスランドの独立運動とヨン・シグルズソン

ノルウェー王・デンマーク王の支配下にあったアイスランドの人々の暮らしは、王たちの統治によって左右されていた。16世紀にはデンマーク王はルター派の信仰を強制し、カトリックの司教を逮捕・処刑し、教会領を没収している。西暦1602年には貿易はデンマークによる独占とされた。西暦1800年には歴史あるアルシング(国会)が廃止された。

そんな状況のアイスランドで西暦1811年に牧師の息子として生まれたのが、ヨン・シグルズソンだった。彼はデンマークの大学で学び、母国の歴史やサガ(中世アイスランドの様々な物語)を究めたんだそうな。そして西暦1843年、彼の母国でアルシング(国会)が復活した。但し、立法機関ではなく、諮問機関としてだったけどね。

復活したアルシングの議員に選ばれたヨン・シグルズソンは、アイスランド独自の憲法を求めるなど、後に母国の独立運動につながる活動の指導者となっていった。そして西暦1874年、デンマーク憲法に付随するものではあったけれども、アイスランド憲法が制定された。その憲法によってアルシングには立法権などが与えられたが、デンマーク国王は拒否権を持っていたんだそうな。

アイスランドの紙幣に描かれた独立運動の指導者ヨン・シグルズソンとアルシング(国会)

ヨン・スグルズソンは西暦1879年に亡くなっている。でも、彼の母国の紙幣(上の画像)には、独立運動の指導者として長く活動した彼の姿が描かれているんだ。ちなみに、上の画像の右下に描かれているのはアルシングの議事堂。但し、西暦1881年に建てられたものだから、彼の死後の建築なんだけどね。

アイスランド独立

西暦1904年、デンマークが派遣していた総督が廃止され、アイスランドが自治を獲得した。西暦1918年、両国の連合条約が締結され、デンマーク王を戴く同君連合の下でのアイスランド王国の主権と独立が認められた。

西暦1940年、ナチス・ドイツがデンマーク・ノルウェーを占領。対抗してイギリス(後にアメリカに交替)がアイスランドを占領した。西暦1944年、アイスランドにおいて行われた国民投票の結果、デンマークとの間の連合条約が解消され、アイスランド共和国が成立した。かくしてヨン・シグルズソンが求めていた母国の独立が実現したわけだ。

アイスランドの切手に描かれた独立運動の指導者ヨン・シグルズソンと独立記念日

アイスランド共和国では、6月17日が独立記念日とされている。上の画像は独立記念日を祝う人々の様子を描いた同国の切手なんだ。その左手に描かれているのは、このページの冒頭の画像にも見えるヨン・シグルズソンの像だね。そして独立記念日とされている6月17日は、彼の誕生日なんだそうな。

長々とアイスランドの独立に関して書いてしまった。次のページからは普通の旅行記に話を戻さなきゃね。


次のページは 「03. チョルトニン湖」



ヨーロッパ三昧 トップ・ページ

ヨーロッパの歴史風景

このサイト「ヨーロッパ三昧」には、下の姉妹サイトもあります。ヨーロッパに興味のある方は寄り道してくださいね。

ヨーロッパの歴史風景 バナー このサイト「ヨーロッパ三昧」の姉妹サイト「ヨーロッパの歴史風景」。ヨーロッパ各国の歴史に重点を置いてある。



Copyright (c) 2000-2016 Tadaaki Kikuyama
All rights reserved
このサイトの画像 及び 文章などの複写・転用はご遠慮ください。

このサイトの運営は、あちこち三昧株式会社が行います。