東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記「真冬のアイスランド」

12. シンクヴェトリルで地球の裂け目 ギャオを見た

ランド・クルーザーで真冬のアイスランドの雪原

いよいよ真冬のアイスランドの旅の最終日となった。7時に起床し、7時半にはホテルのレストランで朝食だ。昨夜もオーロラを見る為に夜中に出かけていたし(結局は見ることが出来なかったけど)、ホテルに戻ってからもバーで騒ぐ若者たちがうるさかったから、寝不足ではある。が、眠ってはいられないね。

ホテルの前からランド・クルーザー 4台に分乗して出発したのは 9時。まずはレイキャビクから車で 20分ほどのところにある小山に登り始めた。傾斜の急な山道は岩だらけ、しかも至る所に雪と氷。夜明けまではまだ 2時間もあるから周囲は真っ暗。でも、運転している青年は慣れているらしく、平気な顔で坂道を登っていく。

ランド・クルーザー・サファリで真冬のアイスランドの雪原を走った

やがて小山の頂上に到着。強風のせいでとっても重いドアを開けて外に出る。あまりの強風に真っ直ぐに立つことも難しい。そんな強風に向かって立つ私の姿は、絵本の北風と太陽に登場する旅人に似ているに違いない。寒いはずなんだけど、異様な状況で興奮しているからか、寒さを感じなかったね。風に抗って必死に立つ家内とランド・クルーザーを撮影して車内に戻った。(上の画像)

山上から眺めた朝陽

ランド・クルーザーは小山の道を下り始めた。登りよりも下りはスリルがある。これほどに凍りついた道で不用意にブレーキを使うわけにはいかない。十分に車間距離を置いて慎重に下っていく。やがて車は山麓の荒野を走り始めた。その雪原の至る所に直径 1メートルほどの穴が口を開けている。その下には川が流れているんだそうな。こんな道、私には絶対に運転できないね。(ちなみに、四国で生まれ育った私は、日本でも雪道では車に乗らない。)

再び車は急な山道を登り始めた。途中で私たちの前を行く車が雪の深みに入り込み、抜け出せなくなるというトラブルはあった。が、やがて山頂に到着。車は 4台ともに無事に到着。このあたりの標高は 800メートルほどなんだそうな。山小屋の前で景色を眺める。次第に空が明るくなり、浮かび上がる雲はゆっくりと色を変えている。遠くの山々の稜線も見え始めた。その山々の上に朝陽(下の画像)が顔を出したのは11時20分のこと。

真冬のアイスランドの山上で見た朝陽

山頂の山小屋でサンドイッチとジュースの昼食を済ませ、山道を下り始めた。まずは私たちの車が雪の深みに入り込んだ。仲間の車に牽引されて脱出。更には別の車も雪の深みに入り込み、ロープで牽引されて脱出。ランド・クルーザーではあっても、真冬のアイスランドの山の中を走るのは大変なんだね。

シンクヴェトリル国立公園

雪と氷に覆われた真冬のアイスランドの山道を下ったランド・クルーザーが、更に走り続けて到着したのはシンクヴェトリル国立公園。その風景が下の画像だ。

真冬のアイスランドのシンクヴェトリル国立公園の風景

西暦874年頃にアイスランドに植民を始めたノルウェー系ヴァイキングの人々は、西暦930年にアルシング(国会)を設立したとされている。今でこそアルシングの議事堂はレイキャビクにある。でも、設立当初のアルシングはこのシンクヴェトリルの岩場で開催されていたんだそうな。

当時のアルシングは6月末から7月初旬にかけての2週間にわたって開催されていた。その開催期間中にはアイスランドのあちこちから人々が集まり、島全土にまたがる問題を議論したらしい。他方でアルシングは人々に宴会や商売の場をも提供していたそうな。ちなみに、西暦1000年にアイスランドはキリスト教への改宗を決めているけれども、それもアルシングでの決定だったらしい。

シンクヴェトリルで見た地球の裂け目 ギャオ

アイスランドの歴史にとって重要な場所となっているシンクヴェトリル国立公園なんだけど、同時に地球の歴史を考える上でも重要な場所でもある。それが下の画像にある地球の裂け目 ギャオなんだそうな。

真冬のアイスランドのシンクヴェトリル国立公園で見た地球の裂け目 ギャオ

地球の表面は十数枚のプレートで出来ているんだけど、そのプレートはマントルの上に乗っている。そのマントルの動き(マントル対流)はプレートを動かすんだけど、ある場所では複数のプレートがぶつかり合い、ある場所ではプレートとプレートが離れていく。そんな複数のプレートが離れていく結果として生じる地球の裂け目が、アイスランドのシンクヴェトリルで見ることの出来るギャオなんだそうな。

マントル対流が二つのプレートを離して行く結果、いつかアイスランドは東西に分かれてしまうに違いない。といっても、この地球の裂け目 ギャオが広がるスピードは 100年に 1メートルなんだそうな。この島が二つに分かれるのはかなり先のことだね。

というわけで、これで今回の旅の観光も終了。ランド・クルーザーに乗り込み、レイキャビクのホテルに帰り着いたのが13時半だった。真冬のアイスランドの山や荒野を堪能するのに、ランド・クルーザーは威力を発揮したね。運転手さんたちの腕も良かった。楽しませてもらった。

他方で私たちも忙しいぞ。ホテルに預けておいた荷物を受け取り、バスに乗り込んだのは14時。向かったのは空港だ。搭乗手続き・出国手続きを簡単に済ませ、最後の免税店で買い物。店の値札はUSドルの表示になっていたけど、財布に残ったアイスランド・クローナも使えた。

私たちの乗り込んだ飛行機の離陸は予定よりも1時間ほど遅れて離陸。ロンドンヒースロー空港に着陸したのが20時。預けた荷物がなかなか出てこない。しかも、空港の外のタクシー乗り場では、今までに見たことがないほどの長い行列。帰宅した時には22時半になっていた。

疲れた。が、楽しい旅だったね。オーロラを見ることは出来なかったけど、真冬のアイスランドを堪能することが出来た。夏のアイスランドの緑の草原も美しいに違いないけど、真冬のアイスランドの澄んだ景色は想像を越えた美しさだった。夏の観光シーズンとは違って、観光客が少ないのも良かったね。あの島を旅するならば、真冬がお勧めだね。


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