東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記「マルタ 聖ヨハネ騎士団の島」

09. 聖ヨハネ騎士団ゆかりの聖アンジェロ城砦(マルタ)

聖ヨハネ騎士団の守りの中心となった聖アンジェロ城砦

西暦1522年のオスマン・トルコ軍の攻撃によりロードス島を失った聖ヨハネ騎士団は、西暦1530年にハプスブルク家の皇帝カール5世からマルタ島を与えられた。島に到着した騎士団は、統治の中心をヴィットリオーザ(旧ビルグ)に置き、その先端にある聖アンジェロ城砦を騎士団長の座所としている。(ヴィットリオーザの北側の海辺から眺めた聖アンジェロ城砦が下の画像なんだ。)

ヴィットリオーザ(ビルグ)の海辺から眺めた聖アンジェロ城砦(マルタ共和国)

但し、この聖アンジェロ城砦は聖ヨハネ騎士団が築いたものではない。遅くとも13世紀には存在していたという記録があるらしい。9世紀にマルタ島を支配していたイスラム教徒によって築かれたとの説もある。もちろん、16世紀に島にやってきた聖ヨハネ騎士団によって改修・増強されているんだけどね。

オスマン・トルコ軍による攻囲と聖アンジェロ城砦

間もなく聖アンジェロ城砦に到着。でも、聖ヨハネ騎士団の八角十字のある鉄格子は閉じられている。中に入ることはできないのかな。と考えているところに無精ヒゲの小柄なおじさんがやって来た。私の顔を見て鉄格子の扉を開いてくれた。有り難う。(でも、後で調べてみると、この聖アンジェロ城砦は一般には公開されていないみたい。私はとっても運が良かったのかな。)

ともかく、オスマン・トルコ軍との戦いの話。西暦1565年、オスマン・トルコ軍がマルタ島に上陸(グレート・シージ)してきた。対する聖ヨハネ騎士団の騎士団長はこの聖アンジェロ城砦から戦いの指揮を執ったそうな。

ヴィットリオーザ(ビルグ)にある聖アンジェロ城砦で見た大砲(マルタ共和国)

聖アンジェロ城砦には多くの大砲も置かれ、攻め寄せるオスマン・トルコ軍に対して火を噴いていた。この聖アンジェロ城砦の大砲から発射された砲弾の破片がオスマン・トルコ軍の指揮官の一人となっていた海賊ドラグート(トゥグルト・レイス)を負傷させ、やがて死に至らしめたらしい。(上の画像は聖アンジェロ城砦で見た大砲。)

聖アンジェロ城砦とセングレアを結んだ大鎖

オスマン・トルコ軍との戦いにおいて、この聖アンジェロ城砦とセングレア(旧リースラ)との間に巨大な鎖が結ばれていたらしい。(下の画像は聖アンジェロ城砦から見たセングレアの先端。)

ヴィットリオーザ(ビルグ)にある聖アンジェロ城砦から眺めたセングレア(マルタ共和国)

その目的はオスマン・トルコ軍の船の侵入を阻むことにあった。この聖アンジェロ城砦のあるヴィットリオーザ(旧ビルグ)とセングレア(旧リースラ)、そしてその奥にあるコスピークワ(旧バームラ)というスリー・シティーズの三つの街の中心に敵軍の船が進入してしまえば、聖ヨハネ騎士団の守りが分断されてしまうからね。

騎士団長ジャン・ド・ヴァレッテの決断

かくしてオスマン・トルコ軍に抵抗を続けていた聖ヨハネ騎士団だったけれども、敵の攻撃を跳ね返す度に騎士団側の兵力は消耗していた。そんな戦いが始まって 3ヶ月となる西暦1565年8月、一部の騎士たちはビルグ(今のヴィットリオーザ)とリースラ(今のセングレア)を放棄して聖アンジェロ城砦に兵力を集中すべきだと主張し始めていた。(下の画像は聖アンジェロ城砦から眺めたヴィットリオーザの街。)

聖アンジェロ城砦からヴィットリオーザ(ビルグ)を眺めた(マルタ共和国)

その主張を受け入れず、聖アンジェロ城砦のみならず、ビルグ(今のヴィットリオーザ)とリースラ(今のセングレア)を守り抜くことを決断したのが、騎士団長ジャン・ド・ヴァレッテだった。

彼は28歳の時にロードス島においてオスマン・トルコ軍との戦いを経験し、西暦1557年に63歳にして騎士団長となり、マルタ島での戦いの際には70歳になっていた。しかし、彼は断固として戦い抜く決意を保ち、やがて敵軍の撤退まで耐え続けた。そんな騎士団長の名にちなんで、新しく建設された要塞都市はヴァレッタと名づけられたんだ。


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