東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「アンダルシアの古都めぐり(スペイン)」

セビリア、コルドバ、グラナダを見て歩いた旅

13. グラナダの大聖堂

アンダルシアの古都グラナダの大聖堂

いよいよ旅も4日目。短い旅の最終日だ。今日の午後の飛行機でロンドンに帰り、明日は金融街シティのオフィスで仕事をすることになる。なんだか気が重くなるね。でも、ロンドンに戻ればパブで大好きなイングリッシュ・ブレックファストを食べることが出来るということだけは楽しみかな。

それはともかく、今日もアンダルシアの古都グラナダの観光だ。下の画像にも見えているけど、きれいな青空が広がってくれたのが有り難いね。

スペイン南部アンダルシア地方の古都グラナダの大聖堂の屋根

というわけで再び上の画像なんだけど、これが古都グラナダの大聖堂の屋根。これからこのグラナダ大聖堂を見て歩こうというわけだ。

グラナダ王国陥落の後にカルロス1世によって建てられた大聖堂

古都グラナダに大聖堂の建設が始まったのは西暦1518年のことだった。西暦1492年にスペイン最後のイスラム王朝であるナスル朝のグラナダ王国が陥落し、ハプスブルク家のスペイン王カルロス1世(翌年に皇帝カール5世)が君臨していた頃のことだね。

13世紀にカスティーリャ王フェルナンド3世によって征服されたコルドバにおいてもカルロス1世は大聖堂を築いたけど、今も残るメスキータ(かつてのイスラム教徒のモスク)の中に建てられたものだった。そんなわけで、コルドバの大聖堂はキリスト教の聖堂としてはとってもユニークなものとなっているわけだ。

スペイン南部アンダルシア地方の古都グラナダの大聖堂の内部

対して、この古都グラナダの大聖堂はモスクの跡地に建てられたものなんだそうな。というわけで、上の画像に見るように、キリスト教の聖堂らしい建物になっているね。

グラナダ大聖堂の中に見るイスラム文化

とはいえ、そんなグラナダ大聖堂の中には、下の画像のような装飾もあった。イスラム文化の香りたっぷりの無数のタイルを使った唐草模様の装飾だよね。

スペイン南部アンダルシア地方の古都グラナダの大聖堂の内部で見たタイルの装飾

アルハンブラ宮殿のページでも書いたけど、スペインに最後に残ったイスラム教徒の王国グラナダには、キリスト教徒による支配を逃れたイスラム教徒が逃げ込んで来ていた。その結果、グラナダにはイスラム文化を高いレベルで伝える知識人・芸術家・技術者が集まっていた。

カトリック両王(カスティーリャ女王イサベル1世アラゴン王フェルナンド2世)の攻撃によってグラナダが陥落し、スペインにおけるレコンキスタ(国土回復運動)が完了した後も、この古都には多くのイスラム教徒がいたわけだ。この大聖堂の建設工事においても、そんなイスラム教徒が働いたんだろうね。

イスラム教徒の強制改宗とモリスコの追放

グラナダの陥落の後、イスラム教徒はカトリックに改宗することを期待された。でも、当初はさほど強く改宗を求めるものではなかったらしい。ところが、次第にイスラム教徒に対する改宗への圧力は強まっていった。そして西暦1525年、スペイン王カルロス1世(皇帝カール5世)は、ついにイスラム教徒に改宗を強制することにしたんだ。

スペインにとどまったイスラム教徒はやむなくカトリックの洗礼を受けたらしい。キリスト教に改宗したスペインのイスラム教徒はモリスコと呼ばれた。そんなモリスコたちの改宗は表面的なもので、秘かにイスラム教の信仰を保った場合が多かったらしい。

カルロス1世の息子のスペイン王フェリペ2世は、父親以上に厳しく異端審問を行おうとした。そんな政策に反発したモリスコたちは、西暦1568年にアルプハラスの反乱を起こしたんだ。その反乱の鎮圧後、古都グラナダに住んでいたモリスコたちはヴァレンシアなどに強制的に移住させられたらしい。(その反乱鎮圧の責任者は、後にレパントの海戦で勝利を得たドン・フアン・デ・アウストリアだった。)

ところが、その後もスペインのモリスコたちは時には反乱を起こし、時にはアルジェリアやモロッコのイスラム教徒たちと連絡を取ろうとしたらしい。結局1609年にスペイン王フェリペ3世はモリスコの追放を命じている。

スペイン全土でモリスコ追放が完了したのは西暦1614年のことだった。その結果、優れた知識人・芸術家・技術者あるいは農業労働者を失ったスペインの経済は停滞を余儀なくされたわけだ。


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「14. グラナダの王室礼拝堂とカトリック両王」



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