東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「春のプロヴァンス (フランス)」

01. アルルの街に残る古代ローマ帝国時代の円形闘技場

ロンドンからアルル

今日は金曜日ではあるけれども、私の住んでいるイギリス(当時)では今日からイースター(復活祭)のお休みで四連休になる。今は四月前半で年度末決算の死ぬほど忙しい時期(休日出勤も当たり前)ではあるけれども、私の場合は仕事よりも旅行だから。

というわけで、ロンドンのヴィクトリア駅から電車でガトウィック空港。ロンドンにある空港はヒースロー空港だけじゃない。とはいえ、飛行機に乗る前の私の過ごし方はいつも同じ。空港の中にあるパブでビールを飲みながらイングリッシュ・ブレックファストを食べる。それで搭乗準備完了だ。

フランス南部プロヴァンス地方の略図

フランス南部プロヴァンス地方にあるマルセイユに到着し、バスで空港を出発したのが13時半だった。この旅の最初の目的地であるアルルまでは1時間ほどだったかな。まずは市内のホテルに荷物を放り込み、身軽になって歩き始める。

アルルに残る古代ローマ帝国時代の円形闘技場

マルセイユに古代ギリシャ人が住み着いたのが紀元前600年頃だった。彼らはその周辺に交易拠点を設けた。例えば今のニースモナコ公国など。そして今のアルルにも彼らは住み着いた。ところが、紀元前535年にはケルト人が街を占領したんだ。彼らはこの街をアルライト(「沼地の近く」)と名づけた。

そして紀元前2世紀、エクサン・プロヴァンスを建設した古代ローマ帝国が、更に進んだこの街を占領した。彼らはこの街をアルラートと呼んだ。それが変化して今はアルルとなっているわけだ。

やがて古代ローマ帝国の英雄カエサル(シーザー)とポンペイウスが戦いを始めた。マルセイユはポンペイウスの側に立ち、対するカエサルの側に立ったアルルは軍船を建造して提供した。やがてカエサルが勝利を得て、アルルはマルセイユに優越する地位を得たんだ。

フランス南部プロヴァンス地方のアルルの街の古代ローマ帝国時代の円形闘技場の外部

そんなわけで古代ローマ帝国の属領ガリア(今のフランス)の中でも特別な地位を得たアルルには、立派な円形闘技場なども建設されたというわけだ。上の画像に見える車と見比べれば、このアルルの円形闘技場の大きさがわかるよね。(といっても、ローマにある円形闘技場と比べれば小さいんだけどね。)

要塞として使われたアルルの円形闘技場

このアルルの円形闘技場なんだけど、私の手持ちの資料の中には古代ローマ帝国の皇帝ウェスパシアヌスの時代に完成したというものもあれば、皇帝ハドリアヌスイギリスにハドリアヌスの長城を残した皇帝)の時代に建設されたというものもある。いずれにせよ、1世紀あるいは2世紀に建てられたものというわけだ。

それだけ古いアルルの円形闘技場が今もこれだけしっかりと残っているというのが素晴らしいよね。西暦476年に古代ローマ帝国(西ローマ帝国)は滅亡したんだけど、その前後から属州ガリアにはゲルマン系諸族などが侵入していた。アルルにはまずは西ゴート族が入り、それをフランク族が奪い取った。でも、東ゴート族のテオドリック王が軍を送って占領したらしい。更に8世紀にはイベリア半島からイスラム教徒のサラセン人も侵入し、一時期はアルルの街を占領していた。

そんなわけで、アルルの街の人々はこの古代ローマ帝国時代の円形闘技場を要塞として身を守ったらしい。8世紀にアルルのみならずプロヴァンス地方を占領したサラセン人もこの円形闘技場を要塞として使ったんだそうな。そんなわけで石材が運び出されることもなく、破壊が進まなかったんだ。(ちなみに、プロヴァンス地方に侵入したサラセン人はプロヴァンス伯ギョーム1世によって西暦973年に駆逐された。)

フランス南部プロヴァンス地方のアルルの街の古代ローマ帝国時代の円形闘技場の構造

上の画像がアルルの円形闘技場の内部なんだけど、確かに要塞に転用できそうに見えるよね。但し、サラセン人が駆逐された後には貧民街となったり礼拝堂になったりしたらしい。西暦1825年から修復作業が始まったんだそうな。

今のアルルの円形闘技場

そして下の画像が現在のアルルの円形闘技場の様子なんだけど、今も現役として使われているんだそうな。

フランス南部プロヴァンス地方のアルルの街の古代ローマ帝国時代の円形闘技場の内部

といっても、古代ローマ帝国時代のようにライオンと剣闘士が戦うわけじゃない。お祭りの会場となったり、闘牛が行われたりしているらしい。但し、このフランス南部プロヴァンス地方の闘牛は、スペインの闘牛とは違って牛が殺されることはないんだそうな。

というのが古代ローマ帝国時代から残るアルルの円形闘技場なんだけど、ここでのお楽しみはまだあるんだ。まずは階段を登って ・・・ 。


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