エミリア・ロマーニャ と トスカナ (イタリア) 1999 年 6 月
列車に乗り間違えたせいで迷い込んだトスカナの田舎町スティッチアーノ。しかも、駅の待合室までも追い出されてしまった。 駅前のバー私たちが落ち着けそうな場所は、駅の前にあるバーしかなさそうだ。スーツ・ケースをひきずりながら、そのバーへ近づいていく。6年間も使いつづけているスーツ・ケース。車輪が少々バカになっている。しかも、アスファルトの路面だ。転がりながらも馬鹿でかい音を立てている。その音が注目を集めないはずが無い。 流れ者のガンマンバーの中にいるのは、テーブルを囲んでトランプをしている男達。バーの主人は、絵にかいたようなマダム。これじゃ、まるで西部劇だ。そして、悲鳴をあげ続けるスーツ・ケースを片手にバーの入口に立った私は、まるで「流れ者のガンマン」 ... 。 いやいや、私は決闘を申し込みに来たわけじゃない。冷えたビールが飲みたいだけだ。彼らと平和的な関係を作り上げたい私は、それを明らかにしなければならない。 帽子を取ってテーブルの上に置きながら、明るく元気な声で「ボン・ジョルノ !!」。軽く会釈を返してくれる人もいる。カードを持つ男達の手が動き始めた。凍りついていた彼らの時間が融けて、再び流れ出す。 ここへ日本人がやってきたのは、おそらく史上初のことに違いない。少なくともこの田舎町の人々にとっては、戦国時代の少年遣欧使節にも匹敵する珍客なわけだ。そんなことはどうでもよいが、とにかく冷えたビールをくれ。 怒ってないよ ...ちょっとだけビールを飲んで咽喉をううろした家内は、椅子に座って下を向いている。そして、ときおり顔を上げては、「怒ってないよ ... 」と言うのだ。 私が尋ねてもいないのにそんな風に言うということは、よっぽど怒っている ... 。ここは余計なちょっかいを出さないのが賢明だ。 私は黙ってビールを飲み、ひたすら旅行メモを書く。
ようやく列車が来たそれから 2時間。バーを出た私たちは、駅のホームで待つ。やがて遠くに列車が見えてきた。これで再び旅を続けることが出来る。 ヒマワリ畑迷い込んだ列車に乗り込みシエナへ戻る途中、一面の向日葵畑(下の画像)を見ることが出来た。この風景を見ただけでも、列車に乗り間違えた価値があったね ? ね ? ね ??
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