東西南北 春夏秋冬
ヨーロッパの旅
サンクト・ペテルブルクの旅(ロシア) 1999年8月
10. ミュージシャン
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民族衣装の男女が消えると、人々の手も口も再び動き始める。ロシアン・サラダやボルシチ、チョウザメのグリルなどなど。実は味はもうひとつだったんだけどねえ。 ふと気がつくと再び音楽が始まっている。といっても、さっきのような民族音楽ではない。 ありきたりのギターが奏でるビートルズだ。店内の片隅の小さなステージで初老の紳士が奏でるギター。 彼のギターを聞いている人は、私以外にはいないようだ。誰もがウオッカを飲み、料理を口に運んでいる。 それから私とギタリストとの二人っきりのセッションが始まった。彼のギターに対する私の反応を見て、私の好みがわかるのだろう。次第に私の好きな曲ばかりが続くようになる。そして最後はビートルズ・メドレーだ。(本当は私はビートルズよりもストーンズなんだけどね。) 店を出るとき、彼の前にチップを置く。演奏を続けながら、顔を上げた彼の顔が微笑んでいた。私も挨拶を返す。誰も気づいていないだろうけど、楽しいセッションだったね。
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