9. 闘牛-4. そして、 ... 。剣を取り替えたマタドール。再びムレタで牛をあしらい、やがてタイミングをあわせて剣を構える。頭を低く下げ、真正面から突進する牛。その背中に剣を突き立てるマタドール。頭を下げた牛の肩甲骨と背骨との間には、わずかに隙間が生じている。その中に差し込まれた剣は、わずかに湾曲している。牛の突進する力と剣の湾曲により、切っ先は牛の心臓に向かい深々と突き刺さる。 ![]() 立ち止まる牛。 見守る闘牛士たち。
|
やがて牛の膝が折れ、戦いが終わった。 ![]() この戦いは闘牛士の勝ちだ。しかし、牛は常に倒されるとは限らないのが闘牛だ。 たとえば今日の2番目の巨大な黒牛。荒れ狂う黒牛は、闘牛士の助手が逃げ込むコンクリートの壁にまで突撃をかけ、助手たちを蹴散らしてしまった。 更にピカドールの馬に向かって突撃し、馬まで倒してしまったのだ。 この牛は強すぎる。しかも、牛が足に怪我をしてしまった。戦いは中止された。怪我をした牛を倒しても、美しくないということだろうか。 闘牛場にポツンと取り残された黒牛。そこへ登場したのが数頭の牛。彼らのカウ・ベルの響きは、血なまぐさい闘牛場に牧歌的な空気をもたらした。荒れ狂っていた黒牛も、仲間たちにつられておとなしくなり、やがて退場していった。 戦いが中止された場合はともかく、戦いが続けられながらも牛を倒すことができないこともある。 牛が登場して20分経過しても倒すことができない場合には、短いファンファーレがならされる。一度目の警告だ。 更に5分が経過しても牛が倒れなければ、再び短いファンファーレがなる。2度目の警告。 その5分後にも牛が倒されていなければ、3度目の短いファンファーレがなる。その瞬間にマタドールは牛と戦う権利を奪われる。マタドールは留置場に放り込まれ、しかも損害賠償まで請求されることもあるらしい。 マタドールという名前の元になっているマタルという言葉の意味は「殺す」。つまり、マタドールは「殺す」ことが本質的な役割なのだ。
All rights reserved このサイトの画像 及び 文章などの複写・転用はご遠慮ください。
|