東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「春のスペイン」

トレド、マドリッド、セゴビアを周り、歴史とバルと闘牛を楽しんだ

10. マドリッドで闘牛を見た -1.

マドリッドのラス・ヴェンタス闘牛場に向かう

夕方17時にホテルを出発。天気は快晴。気温は32度と高いんだけど、空気が乾燥しているからか、日陰にいれば不快感は無い。やがてバスが到着したのは、マドリッド市内にあるラス・ヴェンタス闘牛場(下の画像)。今から初めてスペインの闘牛を見ようというわけだ。

スペインの首都マドリッドにあるラス・ヴェンタス闘牛場にやってきた人々

用意されたチケットを片手に闘牛場の中に入る。スペイン風の赤レンガの教会を野球場のような形にした建物だね。闘牛場の中の通路には、座布団を貸してくれるおじさんがいる。その座布団を手に持ち、指定された座席に腰を下ろす。

私たちの席はソンブラ(日陰)。スペインの闘牛は春から秋まで行われるんだけど、ソル(日なた)の席よりもソンブラの席が料金が高い。いくら空気が乾燥していても、陽射しが強いから、日陰がいいよね。

さて、闘牛が始まる前に基礎知識を整理しておこう。なんせ初めて見るスペインの闘牛だから、少しは勉強しておかないとね。

スペインの闘牛の基礎知識

  • 現在の形の闘牛が生まれたのは18世紀のこと。スペイン南部のアンダルシア地方にあるロンダという場所が発祥の地である。

  • 闘牛に登場するのは、すべて4歳の雄牛。闘牛で殺された牛の肉を売る店もあるが、固くて美味いものではない。

  • 如何に牛を美しく殺すか。それが闘牛士の技である。見事にしとめた場合には、主催者が闘牛士に牛の耳の片方を与えるらしい。完璧にしとめた場合には、両方の耳が与えられる。といっても、牛の耳が宝石になるわけではない。しかし、名誉の象徴である牛の耳を与えられた闘牛士には、次から次へと仕事の話が来るんだそうな。

  • 一晩に6頭の牛が登場する。注意すべきは、牛が闘牛場の中にいる間は、席を立つことができない。つまり、トイレに行くことができるのは、牛が倒された後、次の牛が登場するまでの間である。

やがて、闘牛士の一団が登場した。闘牛場内を一周し、挨拶をして持ち場につく。一晩に登場する牛は6頭なのに対して、闘牛士たちは3グループが登場する。ひとつのグループが、一晩に2頭の牛と戦うらしい。

ちなみに、長い歴史を持つスペインの闘牛なんだけど、スペインにおける最初のプロの闘牛士は、フランシスコ・ロメロなる人物(西暦1726年にプロとなった)なんだそうな。それまでは金銭ではなく、名誉だけを報酬に牛と戦っていたんだね。

牛に向かう主役の闘牛士 マタドール

やがてファンファーレがなりわたる。いよいよ戦いが始まるわけだ。姿を見せた1頭の牛。対する主役の闘牛士 マタドールが登場する。

スペインの首都マドリッドにあるラス・ヴェンタス闘牛場で牛に向かうマタドール

カパと呼ばれる赤い布を手に、突っかかって来る牛をあしらうマタドール。でも、まだ仕留めるタイミングじゃない。マタドールは牛の動きの良さやクセを見抜こうとしているんだそうな。

馬に乗り、槍を持って牛に向かうピカドール

主役の闘牛士マタドールに代わって登場したのはピカドール。マタドールはまた後で登場してくるんだけどね。ちなみに、スペインの闘牛で戦う闘牛士の中で、マタドールと呼ばれるのは一部の人々だけなんだそうな。他の闘牛士たちは、その役割に応じてそれぞれの呼称があるらしい。

スペインの首都マドリッドにあるラス・ヴェンタス闘牛場で牛に向かうピカドール

上の画像に見えているのはピカドール。刺し子で防備を固められた馬に乗り、槍を持っている。馬に向かってくる牛の肩に槍を突き立てる。その槍で背中の筋肉を傷つけられた牛の頭は次第に下がっている。そうさせるのがピカドールの役割なんだそうな。

ちなみに、この闘牛士 ピカドールという呼称の元となっている言葉「ピカール」の意味は「刺す」ということらしい。

小旗のついた銛を牛の背に刺す闘牛士 バンデリジェロ

続いて登場する闘牛士は小旗のついたカラフルで短い銛を持っている。この「小旗のついた銛」のことをバンデリジャと呼ぶ。そのバンデリジャを持つ闘牛士は、バンデリジェロと呼ばれるんだ。

スペインの首都マドリッドにあるラス・ヴェンタス闘牛場で牛に向かうバンデリジェロ

バンデリジェロたちは短い銛を手に牛の正面に立つ。そんな闘牛士に対して突撃する牛。その立派な角をかわしながら、バンデリジェロは牛の背中に銛を刺す。続いて二人目、三人目のバンデリジェロたちも牛に向かっていった。

機は熟した。いよいよ闘牛のハイライトが近づいてくる。闘牛士の主役 マタドールが再び登場するんだ。マタドールという闘牛士の呼称の元になっている言葉は「マタル」。その意味は「殺す」ということらしい。スペインの闘牛においては、牛は最後に殺されてしまうんだ。

余談ながら、フランス南部プロヴァンス地方などでも闘牛は行われている。アルルの街の古代ローマ帝国時代の円形闘技場や、ニームの街の円形闘技場でも闘牛が行われるらしい。でも、牛が殺されることは無いんだそうな。更には日本の愛媛県の宇和島周辺や沖縄県の石垣島などで闘牛が行われる。でも、そこでは牛と牛が戦い、牛が殺されることは無いんだけどね。という余談はさておき、次のページはいよいよスペインの闘牛のフィナーレだ。


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