東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「初秋のブルゴーニュ」 (フランス)

ディジョン、ジュヴレ・シャンベルタン、ボーヌ、ペルージュ、リヨン

13. オスピス・ド・ボーヌ (オテル・デュー) -2.

貧者の施療院として設立されたオスピス・ド・ボーヌ (オテル・デュー)

前のページでオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)の色彩鮮やかな屋根を眺めながら書いたように、西暦1451年に完成したこの施設は、傷ついた貧しい人々の為の施療院として設立されたものだった。

フランスのブルゴーニュ地方の街ボーヌにあるオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)の内部

当時のフランスでは、長く続いた百年戦争の為に人々は疲弊していた。ジャンヌ・ダルクがオルレアンを解放してフランス王シャルル7世を戴冠させ、イングランド軍の占領地を奪還しつつあったけれども。

このオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)を完成させたブルゴーニュ公国の宰相ニコラ・ロランがブルゴーニュ公フィリップ善良公とフランス王シャルル7世との和解を成立させはしたものの、イングランドとの百年戦争はまだ終結してはいなかった。

オスピス・ド・ボーヌ (オテル・デュー)に寄進されたブドウ畑

傷ついた貧しい人々に治療や癒しを与える為に設立されたオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)には、貴族たちがブドウ畑を寄進した。そのブドウ畑のブドウから生み出されるブルゴーニュのワインの売上が、貧しい人々の為の治療などの費用を賄ったんだそうな。(下の画像はオスピス・ド・ボーヌの中で見た薬棚。)

フランスのブルゴーニュ地方の街ボーヌにあるオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)の内部で見た薬棚

今でも毎年11月、このブルゴーニュ・ワインの商都ボーヌにあるオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)では、ワインのオークションが行われる。そのオークションでは、今もオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)のブドウ畑で収獲されたブドウで作られたワインも競売に出てくる。ちなみに、この施設は西暦1971年まで病院として使われていららしい。

オスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)にあった「最後の審判」

貧しい人々に無料で医療を施していたオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)。でも、当時の医学では、病気から回復した人々よりも、治療の甲斐なく亡くなった人々の方が多かったろうね。

フランスのブルゴーニュ地方の街ボーヌにあるオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)の内部で見た祭壇

そんなオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)の大病室の奥には、上の画像に見える祭壇も設けられていた。その大病室には15世紀の祭壇画「最後の審判」があったんだそうな。(その祭壇画「最後の審判」は、今では特別室で保管・展示されている。残念ながら撮影は禁止されていた。)

「最後の審判」といえば、イタリアの首都ローマヴァティカン美術館・博物館の奥にあるシスティーナ礼拝堂にあるミケランジェロの作品が名高いよね。でも、死が間近にあった中世では、様々な画家が描いた「最後の審判」があちこちで多くの人々の目の前にあったんだろうね。

オスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)のキリスト像

オスピス・ド・ボーヌはオテル・デュー(「神の館」)とも呼ばれる。その大病室の壁には下の画像に見えるキリストの像があった。

フランスのブルゴーニュ地方の街ボーヌにあるオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)の内部で見たキリスト像

中世の医学では治癒を望めず、やがて来る死を待つ貧しい病人たち。並べられたベッドの上に横たわって、「最後の審判」について、つまりは自分の今までの人生について、考えていたのかもしれない。そんな貧しく病める人々を、キリストの像は見下ろしていたんだろうね。

身体は健康であっても、現代社会に生きる今の私たちは誰もが「貧しく病んで」いるのかもしれないけど。

全くの余談を一つ。毎年11月には、このボーヌのオスピス・ド・ボーヌ(オテル・デュー)を中心とするあちこちでワイン祭りが開催される。そのワイン祭りの中心となる三日間のことを、ブルゴーニュでは「栄光の三日間」と呼ぶ。が、この「栄光の三日間」という言葉は、一般的には西暦1830年のフランス七月革命に関係する用語なんだけどね。


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