東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「カンパーニャとローマ・ヴァティカン」(イタリア)

第四部 ローマ・ヴァティカン編

D12. ラファエロ -2. 署名の間

ヴァティカンの署名の間で絵画の制作を始めたラファエロ

ヴァティカン宮殿の建築家だったブラマンテは、ローマ教皇ユリウス2世に25歳の若い画家を推薦した。教皇ユリウス2世はヴァティカン宮殿の中の自分の居住スペースの装飾を、その若い画家に委ねた。それがラファエロだった。(ちなみにブラマンテと教皇ユリウス2世は、今のサン・ピエトロ大聖堂の建築を始めたコンビだった。)

新進気鋭の画家ラファエロは、西暦1508年からヴァティカンでの仕事を始めた。彼が最初に手がけたのが、ローマ教皇ユリウス2世の書斎となった部屋だった。それがこの「書名の間」なんだ。

そんな「署名の間」で見ることのできるラファエロの絵画の一つが下の画像にある「聖体の論議」だね。天上界にいる聖人たち、地上にいる神学者たち、そして中心には父と子と精霊(すなわち三位一体)が描かれている。神学、つまりは究極の「真実」の勝利がこの絵画のテーマなんだそうな。

イタリアの首都ローマのヴァティカン美術館・博物館の中の署名の間にあるラファエロの絵画「聖体の論議」

ちなみに、天上界の中心にいる子、つまりキリストの右側にいるのは洗礼者ヨハネ(キリストに洗礼を施した人物)。他方でキリストの左側には聖母マリアがいる。ちょいと遠すぎて、聖母マリアのお顔がよく見えないのが残念だね。私はラファエロが描く聖母マリアが大好きなんだ。(特にフィレンツェにあるラファエロの「小椅子の聖母」がね。)

署名の間で見たラファエロの絵画「パルナッソス山」

続いては、ラファエロの絵画「パルナッソス山」が下の画像だ。描かれているのは、音楽を奏でるミューズ(ムーサ)たち、叙事詩・叙情詩を詠う詩人たち、その中心にいるのはアポロン。この絵画のテーマは、音楽と詩による「美」なんだそうな。

イタリアの首都ローマのヴァティカン美術館・博物館の中の署名の間にあるラファエロの絵画「パルナッソス山」

ところで、このパルナッソス山なんだけど、実はギリシアに実在する山なんだそうな。標高は2,500メートルを越える高山で、スキー場もあるらしい。冬になるとゲレンデでは現代のミューズたちが音楽を楽しんでいるんだろうね。ちなみに、ギリシア神話でもパルナッソス山はミューズ(ムーサ)たちの住む場所とされていたんだそうな。

署名の間でも最も名高いラファエロの絵画「アテネの学堂」

そしてラファエロの絵画「アテネの学堂」(下の画像)は、この署名の間でも最も名高い作品なのかな。この絵画のテーマは理性なんだそうな。

イタリアの首都ローマのヴァティカン美術館・博物館の中の署名の間にあるラファエロの絵画「アテネの学堂」

中央の空色の服を着て、左手に本を持ち、右手の掌を下へ向けている人物はアリストテレスなんだそうな。掌を下(つまり大地)に向けているのは、実在の物理的確かさを暗示しているらしい。

その左側に立ち、右手の人差し指を空へと向けている人物はプラトンなんだけど、レオナルド・ダ・ヴィンチそっくりに描かれているらしい。空へ向けられている彼の人差し指は、知識の源を指し示しているとか。

そのプラトンの足許の階段の下で机の上で何かを書きながら考えている人物はヘラクリトスなんだけど、ミケランジェロの顔をしているんだそうな。

アリストテレスのすぐ下、階段で寝転がって考え事をしているのは、古代ギリシャの哲学者ディオゲネス(樽仙人とも呼ばれる)なんだそうな。彼はアレキサンダー大王に「望みは無いか」と尋ねられた時、「そこに立たれると日陰になるのでどいてくれ」と答えたとか。

ラファエロと署名の間

この署名の間には、その他にもラファエロの絵画がいくつも残されている。それらのテーマは、正義・慈悲・希望・信仰・法律などなんだそうな。(下の画像は署名の間の天井に描かれている「アダムとイヴ」。)

イタリアの首都ローマのヴァティカン美術館・博物館の中の署名の間の天井にあるラファエロの絵画「アダムとイヴ」

そして西暦1512年、ラファエロは署名の間での制作を完了させ、続いてさっき見て歩いたヘリオドロスの間での制作に移ったんだそうな。


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