東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「春のプロヴァンス (フランス)」

03. アルルのサン・トロフィーム教会

アルルのサン・トロフィーム教会

アルルに残る古代ローマ帝国時代の円形闘技場から街やローヌ川の眺めを楽しんだら、下へ降りて街の通りを歩く。アルルの旧市街はさほど大きくもなく、数分も歩けば色々なものを見ることができるんだ。(但し、後で登場する画家ゴッホの跳ね橋はちょいと遠い。)

フランス南部プロヴァンス地方の街アルルのサン・トロフィーム教会の外観

間もなく到着したのが、上の画像にあるサン・トロフィーム教会だった。12世紀から15世紀にかけて建てられた教会なんだそうな。

初代アルル司教となった聖トロフィームとサン・トロフィーム教会

西暦250年にアルルの初代司教となった聖トロフィーム(サン・トロフィーム)という人物がいたらしい。イタリアの首都ローマで聖パウロ・聖ペテロの教えを受けてキリスト教徒となり、プロヴァンスに布教の為にやってきたらしい。(彼の出身については他にも説があるんだけど。)

ちなみに、その頃は古代ローマ帝国各地で布教を行った人々が殉教することが多かったみたい。イギリスの首都ロンドンの近くで殉教した聖アルバンフランスの首都パリの北にあるモンマルトルの丘で殉教し、サン・ドニ大聖堂のある場所まで歩いて倒れたと言われる聖ドニも。そもそもローマのサン・ピエトロ大聖堂だって皇帝ネロの迫害で殉教した聖ペテロの墓の上に建てられているらしいからね。

話を戻して、アルルの初代司教となった聖トロフィームの従兄弟の聖ステパノは殉教したらしいけど、聖トロフィームが殉教したとは私の持つ資料には無いんだ。殉教することなく、人生を全うしたんだろうか。そんな聖トロフィームの遺骸は、アルルの街の入り口にあるアリスカン(共同墓地)に葬られていたらしい。

フランス南部プロヴァンス地方の街アルルのサン・トロフィーム教会の正面ファサード

他方で、今のアルルのサン・トロフィーム教会の場所には、聖ステパノに捧げられた教会があった。そこに西暦1152年に聖トロフィーム(サン・トロフィーム)の遺骸が移され、サン・トロフィーム教会と呼ばれている。

アルルのサン・トロフィーム教会の彫刻

上の画像に見えるサン・トロフィーム教会の正面ファサードの扉の上の彫刻を大きく写したのが、下の画像なんだ。中央上部は言うまでもなくキリストだよね。

フランス南部プロヴァンス地方の街アルルのサン・トロフィーム教会の正面ファサードの扉の上の彫刻

その左右には四人の福音史家が刻まれている。キリストの右上の鷲は聖ヨハネ。その下の牡牛は聖ルカ。左上の天使は聖マタイ。そして左下のライオンは聖マルコだよね。

ちなみに、聖マルコはイタリアの水の都ヴェネツィアの守護聖人なんだけど、ヴェネツィアへ行けば聖マルコのシンボルのライオンを見ることも出来るね。聖マルコの遺骸は、ヴェネツィアのサン・マルコ寺院に葬られているとされているんだ。

アルルのサン・トロフィーム教会は歴史の舞台だった

アルルのサン・トロフィーム教会は聖トロフィームにゆかりの場所ではあるんだけれども、他にも多くの歴史上の人物がこの教会に関係している。

聖アウグスティヌス(カンタベリーのアウグスティヌス)は西暦597年にイギリス南部のカンタベリーでキリスト教の布教を始めたんだけど、その年のうちに彼はアルルのサン・トロフィーム教会において教皇の代理によってイングランドの司教とされたんだそうな。

西暦1178年にはここで神聖ローマ帝国皇帝フリードリヒ・バルバロッサのアルル王国の王としての戴冠式が行われたらしい。西暦1365年には同じく皇帝カール4世のアルル王としての戴冠式が行われている。

西暦1399年にはプロヴァンス伯ルイ2世・ダンジューの結婚式がこのアルルのサン・トロフィーム教会で挙行されている。その息子のプロヴァンス伯ルネ・ダンジューの2度目の結婚式も西暦1454年にこの教会で挙行された。(そのルネ・ダンジューが亡くなって間もなくプロヴァンスはフランス王に帰属することになったんだけどね。)

当時のサン・トロフィーム教会は、司教座のある大聖堂だった。ところが西暦1801年には司教座が同じくフランス南部プロヴァンス地方にあるエクサン・プロヴァンスに移ってしまった。その結果、このサン・トロフィーム教会は大聖堂ではなく教区教会に格下げとなったんだそうな。


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