東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「アルザスとストラスブール (フランス)」

03. コルマールの古い街並みを歩く -1. (アルザス地方)

コルマールの古い街並みを歩いて「頭の家」

ストラスブールから列車に乗り、コルマール駅で降りて古い街並みを眺めながら歩く。まず登場したのが、下の画像にある「頭の家」と呼ばれる建物なんだ。

フランス東部アルザス地方のコルマールにある顔の家

この「頭の家」の柱や壁には111点もの顔の彫刻がある。故に「頭の家」なんだそうな。「顔の家」と呼んじゃいかんのかとも思うけど、フランス語もわからないし、これ以上は考えるのは諦めよう。ちなみに、この家が建てられたのは西暦1609年のことなんだそうな。かつてこの建物はアルザス・ワインの取引所だったらしい。そして今は建物はホテルやレストランとして使われているんだ。

コルマールのウンターリンデン美術館にある
「イーゼンハイムの祭壇画」

歴史あるコルマールの街には、古い建物だけではなくて価値の高いお宝も多いらしい。その中でも筆頭が、下の画像のウンターリンデン美術館にある「イーゼンハイムの祭壇画」かな。私たちがコルマールまでやって来た目的の一つは、この美術館の中にあるグリューネヴァルトの作品「イーゼンハイムの祭壇画」(西暦1512年から1516年ころにかけて制作されたらしい)を見ることだった。

フランス東部アルザス地方のコルマールにあるウンターリンデン美術館

ところが ・・・ 今日はメーデーの祝日でウンターリンデン美術館はお休みなんだって。仕方ないね。やむなく美術館の前の観光案内所の売店で「イーゼンハイムの祭壇画」の絵葉書を探す。

ん、なんだか観光案内所の方から英語の会話が聞こえる。日本人のカップルだ。わざわざ日本からウンターリンデン美術館まで「イーゼンハイムの祭壇画」を見に来たんだと観光案内所のスタッフに訴えている。ともかく美術館に入れてくれと激しく詰め寄っている。気持ちはわかる。が、そこまで言っちゃ見苦しいよ。相手のスタッフも可哀相だな。

ところで、このウンターリンデン美術館なんだけど、そもそもは西暦1230年に建てられた修道院の建物だった。そして西暦1853年(フランス皇帝ナポレオン3世の時代だね)に美術館としてオープンしたんだそうな。

コルマールのドミニカン教会にある「薔薇垣の聖母」

続いては下の画像のドミニカン教会。ここにはマルタン・ションゴエールによる「薔薇垣の聖母」(西暦1473年ころの作品)がある。

フランス東部アルザス地方のコルマールにあるドミニカン教会

このドミニカン教会は西暦1289年の建物なんだそうな。でも、今では図書館になっているらしい。

コルマールの教会・修道院とキリスト教芸術、そして歴史の荒波

コルマールの街は9世紀に築かれたんだそうな。そして西暦1226年には神聖ローマ帝国の中の帝国自由都市となり、16世紀には宗教改革の荒波に巻き込まれている。まずアルザス地方にはルター派が広がったらしい。

そのルター派はカトリック的な彫像や絵画を敵視していたんだそうな。ローマサン・ピエトロ大聖堂を飾る絵画や像(ミケランジェロラファエロなどの素晴らしい作品も多いんだけど ・・・ )は、ルター派から見れば悪魔の芸術作品なのかな。

そんなわけで「イーゼンハイムの祭壇画」も教会の倉庫の奥にしまいこまれ、忘れ去られた存在になっていった。そんな祭壇画がウンターリンデン美術館に展示され、中世美術の傑作として再び社会の注目を浴びたのが19世紀半ばのことだった。

西暦1538年にはプロテスタントの指導者として名高いジャン・カルヴァンがアルザス地方の中心都市ストラスブールに来て、そこに3年間も滞在している。そのジャン・カルヴァンの考えに従うプロテスタントのことをフランスではユグノーと呼んでいた。そのユグノーをめぐってフランスでは激しい争いが続いたんだ。西暦1572年にはサン・バルテルミーの虐殺が起こり、西暦1588年にはフランス王アンリ3世がギーズ公を暗殺し、翌年にはそのアンリ3世が殺害されたブルボン家のフランス王アンリ4世が即位している。

当時のコルマールを含むアルザス地方はフランスではなく、神聖ローマ帝国の中にあった。でも、西暦1575年にはコルマールはプロテスタントに移っている。やがて神聖ローマ帝国では三十年戦争が起こり、西暦1632年にはコルマールはプロテスタント側に立つスウェーデン軍によって占領されている。

そして西暦1673年にはフランス王ルイ14世太陽王によってコルマールが占領され、西暦1679年にはナイメーヘン条約によってコルマールはフランスに帰属することとなった。西暦1789年にフランス革命が起こり、西暦1791年には修道院などの財産が没収されている。そんな嵐の中で修道院や教会は閉鎖され、その建物は今では美術館あるいは図書館となっているわけだね。


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