東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「ニース・エズ・モナコ公国とロンドン」

17. シャガール美術館で見た聖書の世界 -2.

シャガール美術館で見た「人類の創造」

フランス南部ニースにあるシャガール美術館で見ることの出来る聖書をテーマとするシャガールの作品のうち、アブラハムとイサクに関するものを前のページでは取り上げてみた。このページでは、まず「人類の創造」(下の画像)を見てみるかな。

フランス南部ニースのシャガール美術館で見た「人類の創造」

翼を持つ天使が抱えているのは、まだ魂が入っていない肉体だけのアダム。天使はアダムをエデンの園に連れて行き、そこから人類の物語が始まるわけだ。そんな人類の未来は右上の太陽の周囲の渦巻きに描かれている。その中には十字架にかけられるキリストも描かれている。

この作品が描かれたのは西暦1950年代の後半だった。前のページに書いたように、第二次世界大戦においてドイツに占領されたフランスからアメリカに亡命したユダヤ人のシャガールは、ドイツの首都ベルリンの陥落から2年後の西暦1947年にはフランスの首都パリに戻っている。

話が横道に入っちゃうんだけど、ちょうど同じ頃に小説「星の王子さま」の作家サン・テグジュペリもフランスからアメリカに亡命している。でも、やがて義勇軍のパイロットとして偵察機を操縦していたサン・テグジュペリはマルセイユの沖の地中海に沈んだんだけどね。

戦後のフランスに戻ったシャガールはプロヴァンス地方などのフランス南部を気に入り、岩山の上のゴルド村などを発見して仲間の芸術家などに紹介している。他方でシャガールはフランス国籍も取っている。上の作品が描かれたのは、そんな時期だったんだね。

シャガール美術館で見た「楽園」

神によって創造されたアダムを天使がエデンの園に連れて行く。そのエデンの園でのアダムとイブを描いた作品が、下の画像にある「楽園」だった。

フランス南部ニースのシャガール美術館で見た「楽園」

上の画像の右側で抱き合う二人はアダムとイブ。その左に見える赤は知恵の木の実。その知恵の木にはヘビが潜んでいる。知恵の木の赤い実を食べ、彼らが楽園を追放されるのは間もなくなんだね。ちなみに、この作品は西暦1961年のものなんだそうな。

シャガール美術館で見た「ノアと虹」

楽園を追放されたアダムとイブの子孫の人間たち。でも、罰として労働と出産の苦しみを課されながらも、人類は地球上に広がっていった。でも、とうとう神を怒らせてしまう。神は洪水を起こして人類を滅ぼしてしまう。ただ、ノアの一族を除いて。

フランス南部ニースのシャガール美術館で見た「ノアと虹」

箱舟で生き延びたノアは洪水が治まった後に祭壇を設けて感謝を示す生贄を神に捧げた。上の画像に見えるシャガールの作品「ノアと虹」の中では、そんなノアの前に神が姿を見せた。白く描かれた虹は、神とノアとの約束なんだそうな。

この作品は西暦1960年代のものなんだそうな。その頃のシャガールは、パリのオペラ座に天井画を描いている。その天井画が完成したのが西暦1964年だった。

シャガール美術館で見た「雅歌III」

ニースのシャガール美術館には、まだまだ多くのシャガールの作品がある。でも、この旅行記でお見せする最後の作品が、下の画像にある「雅歌III」。シャガールは旧約聖書から取った題材でいくつもの雅歌を描いているんだけど、西暦1960年に描かれた下の画像の作品もその一つだね。

フランス南部ニースのシャガール美術館で見た「雅歌III」

中央に描かれた城壁に囲まれた街は、シャガールが住んだフランス南部のヴァンスなんだそうな。その下に上下さかさまに描かれた街は、シャガールの故郷ヴィテブスク。その下に同じく上下さかさまに描かれた人物は、荷物を背負って故郷を出るシャガールだと解されている。

そんな二つの街の左側に上下に長く描かれたカップル、そして作品の右下の部分に描かれたカップル ・・・ シャガールは生涯に二度の結婚をしているけど、二ヶ所に描かれたカップルは何を描いているんだろうね。

ちなみに、最初の奥さんのベラは、第二次世界大戦の際にアメリカに亡命していた時に亡くなっている。二度目の結婚は西暦1952年、シャガールが60歳代半ばの時だった。

そんなこんなで描かれた連作「聖書のメッセージ」。シャガールはその連作を西暦1966年にフランスに寄贈したんだ。そんなシャガール作品を展示するためにフランスがニースに設立したのがシャガール美術館、正しくはシャガール聖書メッセージ国立美術館だった。


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