東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「エミリア・ロマーニャとトスカナ(イタリア)」

57. フィレンツェで見たラファエロの聖母

ラファエロの「小椅子の聖母」

私の好きなイタリアの芸術家といえば、ミケランジェロ、ラファエロ、カラヴァッジョベルニーニなどなんだけど、その中でも最も好きなのがラファエロかな。多くの彼の作品の中でも、最もお気に入りなのが下の画像なんだ。

フィレンツェのパラティナ美術館で見たラファエロの絵画「小椅子の聖母」(イタリア)

ラファエロの「小椅子の聖母」。正式には「聖母子と子供の洗礼者ヨハネ」というらしい。洗礼者ヨハネといえばヨルダン川でイエス・キリストに洗礼を施した人物なんだけど、二人の母親は近しい関係にあったらしい。キリストと聖ヨハネが子供の頃に上の絵画のような接触があっても不自然ではないのかもしれないね。

ちなみに、この絵に描かれているのは庶民の母子だと解釈されたこともあったそうな。でも、この椅子はローマの教皇庁で使われていたものと似ていること、東洋風のターバンや肩掛けはラファエロの時代に貴婦人の間で流行していたものだということで、二人が庶民の母子だとの解釈は否定されている。

ちなみに、この「小椅子の聖母」が描かれたのは西暦1516年頃とされている。西暦1483年生まれのラファエロが33歳の頃の作品なんだね。

ラファエロの「大公の聖母」

続いては、ラファエロが西暦1506年頃に描いたとされる「大公の聖母」が下の画像だ。

フィレンツェのパラティナ美術館で見たラファエロの絵画「大公の聖母」(イタリア)

このラファエロ作品を購入したのは、メディチ家断絶の後にトスカナ大公位を継承したハプスブルク・ロレーヌ家のフェルディナンド3世だった。彼はこの作品を常に身近に置いていた。眠る時にはこの聖母をベッドの上に飾り、旅に出るときにも持ち歩いたそうな。トスカナ大公の大のお気に入りというわけで、「大公の聖母」と呼ばれているらしい。

ところで、このフェルディナンド3世はフランス革命後の西暦1790年にトスカナ大公となっている。でも、イタリアに侵入したナポレオンによって、西暦1801年にはトスカナを奪われてしまった。そんな動乱の時代の不安の故にラファエロの聖母を片時も離すことができなくなったのかな。

でも、西暦1814年にナポレオンが退位した後にフェルディナンド3世はトスカナ大公として復位している。大公としてはトスカナ地方の開拓や治水に業績を残したんだそうな。

ラファエロの「天蓋の聖母」

フィレンツェのパラティナ美術館でラファエロの聖母を見てきたんだけど、下の画像の作品は「天蓋の聖母」。あるいは「聖母子と諸聖人」とも呼ばれている。聖母子の周囲には様々な聖人たちが描かれているんだそうな。

フィレンツェのパラティナ美術館で見たラファエロの絵画「天蓋の聖母」(イタリア)

ラファエロがこの「天蓋の聖母」を描いたのは西暦1508年のこととされている。その年、ラファエロはローマに移っている。サン・ピエトロ大聖堂の建設を始めたローマ教皇ユリウス2世に招聘され、ヴァティカンでの制作を始めるためだった。

多忙を極めたラファエロ

ラファエロをローマに招聘した教皇ユリウス2世が亡くなった後も、フィレンツェのメディチ家の出身の教皇レオ10世はラファエロにヴァティカンでの制作を続けさせている。その時期のラファエロの作品は、ローマのヴァティカン美術館・博物館の中のヘリオドロスの間署名の間火災の間などで見ることが出来るよね。

西暦1514年に建築家のブラマンテが亡くなり、ラファエロがサン・ピエトロ大聖堂の建築責任者とされてしまった。更には彼はローマのサンタ・マリア・デル・ポポロ教会の中の礼拝堂などその他の現場での制作も担わされている。加えて、このページの冒頭に掲げた「小椅子の聖母」などの作品もこの時期に描いていたんだ。多忙を極めたラファエロの工房では、数十人の芸術家が働いていたらしい。

売れっ子の芸術家として働き続けたラファエロ。でも、他方では多くの女性と関係があったそうな。結婚は一度もしていないんだけどね。そんなラファエロが亡くなったのが西暦1520年のこと。37歳だった。そんなラファエロのお墓はローマのパンテオンにある。


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