東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「エミリア・ロマーニャとトスカナ(イタリア)」

14. 古都ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会 -1.

古都ラヴェンナにあるサン・ヴィターレ教会に到着

古都ラヴェンナに現存する最古の建物と言われるネオニアーノ洗礼堂から歩くこと 500mほど。大した距離じゃないけど、冷たい雨が降ったりやんだり。デコボコのある古い石畳の道にはたくさんの水たまり。たっぷりと水を吸った靴は冷たくて重い。

イタリアの古都ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会(聖ヴィターレ聖堂)の外観

でも、「雨ニモ負ケズ、風ニモ負ケズ」に観光を続ける私たちが到着したのが、イタリアの古都ラヴェンナの世界遺産の一つとなっているサン・ヴィターレ教会(上の画像)だった。

6世紀前半に建てられたサン・ヴィターレ教会

4世紀末のことなんだけど、イタリアの街道の街ボローニャで聖ウィタリス(サン・ヴィターレ)の遺骸が発見された。やがてその遺骸は西ローマ帝国の首都となっていたラヴェンナに移され、そこに小さな霊廟が建立されたんだそうな。

そして6世紀前半、その霊廟のあった場所に今に残るサン・ヴィターレ(聖ウィタリス)教会が建てられた。その建立が始まったのはテオドリック王で名高い東ゴート族の王国の時代だったのか、あるいはユスティニアヌス1世(大帝)の東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の時代だったのかははっきりしないらしい。(東ゴート族のテオドリック王が亡くなった西暦526年に建立が始まったという説もあるけど。)

でも、この教会が完成した時点でのラヴェンナは東ローマ帝国の支配下にあった。故にサン・ヴィターレ教会は東ゴート族が信じたアリウス派ではなく、ローマ・カトリックに従って聖別されたんだそうな。その聖別を行ったのが大司教マクシミアヌスだった。さっき見た大司教館付属博物館に象牙の司教座を残した人物だね。

イタリアの古都ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会(聖ヴィターレ聖堂)の内部

そんな歴史あるサン・ヴィターレ教会(聖ウィタリス聖堂)の内部の様子が上の画像。かつては壁も柱もモザイク画に覆われていたらしい。そのモザイク画は失われ、代わりにフレスコ画が描かれたんだそうな。

サン・ヴィターレ教会の内陣と天井の華やかなモザイク画

サン・ヴィターレ教会の中を更に奥へと進む。やがて内陣と天井を飾る華やかなモザイク画(下の画像)が見えてくる。教会のこの部分には 6世紀のモザイク画が残っているんだ。

イタリアの古都ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会(聖ヴィターレ聖堂)の内陣と天井のモザイク画

上の画像の上部、つまり内陣の天井にあたる部分には、4人の天使に支えられる子羊が描かれている。この子羊はキリストを表現しているらしい。その下の内陣の上にあたる部分に描かれているのは、キリストと使徒たちなんだそうな。

内陣の壁にもモザイク画

サン・ヴィターレ教会の内陣の左右の壁にも多くのモザイク画が残されている。例えばアブラハムと三人の天使やイサクの生贄(下の画像)も描かれている。

イタリアの古都ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会(聖ヴィターレ聖堂)の内陣の壁のモザイク画

アブラハムにしてもイサクにしても、旧約聖書に登場する人物だよね。新約聖書においても、マタイによる福音書の冒頭に登場する。アブラハムの息子がイサクで、十字架にかけられたキリストは二人の子孫にあたる。

ついでながら、アブラハムやイサクなどの旧約聖書の物語については、画家シャガールが多くの作品に描いているね。ニースのシャガール美術館へ行けば、見ることが出来るんだ。

ところで、旧約聖書の中の「アブラハムの供犠 あるいは イサクの生贄」なんだけど、せっかくだからその概要を下に書いておくかな。

アブラハムの供犠 あるいは イサクの生贄
(旧約聖書 創世記 第22章より)

  1. ユダヤ人の族長であるアブラハムの信仰心を試そうとした神は、アブラハムに命じた。「モリヤの地に赴き、息子のイサクを神に献じなさい。」

  2. アブラハムは息子イサクを連れて出発した。父の手には刃物が握られており、息子の背には薪が担われていた。

  3. 息子イサクは父に尋ねた。「神に捧げる仔羊は何処にあるのですか」。「息子よ、捧げ者は神様が用意してくださる。」と父。

  4. 山上に祭壇を築いて薪を並べた父アブラハムは、息子を縛り祭壇に乗せた。父が刃物をふりあげたとき、神の声が聞こえた。

  5. 「アブラハム、息子を殺してはならない。お前が神を信じる者であることは良くわかった。」

  6. アブラハムは茂みの中でヒツジを捕え、あらためて生贄として神に捧げた。

  7. 「あなたを祝福し、子孫を増やそう」と神はアブラハムに言った。

聖書の中ではイエス・キリストがアブラハムとイサクの子孫とされていることは先に書いたけど、ダビデやソロモン王も二人の子孫(キリストの祖先)とされている。自分の息子を生贄に捧げようとしたアブラハムに言った言葉を神は守ったということになるんだろうね。


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