東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「エミリア・ロマーニャとトスカナ(イタリア)」

15. 古都ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会 -2.

東ローマ帝国の皇帝ユスティニアヌス1世(大帝)のモザイク画

古都ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会の中には、歴史好きには興味深いモザイク画もある。それが下の画像のモザイク画なんだ。

イタリアの古都ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会にある東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の皇帝ユスティニアヌス1世(大帝)と家臣たちを描いたモザイク画

上の画像の中央に見えている黒っぽい服装の男性は、東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の皇帝ユスティニアヌス1世(大帝)。その左隣に立っているのは、極めて優れた用兵で名高い将軍ベリサリウスなんだそうな。

皇帝ユスティニアヌス1世(大帝)と将軍ベリサリウス

農民の子として生まれたユスティニアヌスなんだけど、西暦527年には東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の皇帝となった。その時点で既に西ローマ帝国は滅び去っており、フランスはフランク族のメロヴィング家が支配し、イタリアは東ゴート族の王テオドリックが支配下に置き、イベリア半島は西ゴート族の手に落ちていた。つまり、かつてヨーロッパと地中海を制覇した古代ローマ帝国は見る影も亡くなっていたわけだ。

ところが、ユスティニアヌス1世(大帝)は失われた領土を再び征服していったんだ。イタリアに軍を送り込み、西暦535年にはローマを回復、更には西暦540年には東ゴート王国からラヴェンナを奪い返し、西暦553年には東ゴート王国を滅亡させている。他方で西ゴート族王家の内紛に乗じて西暦552年にイベリア半島に進出し、今のスペイン南部アンダルシア地方にスパニア属州を置いている。

ユスティニアヌス1世(大帝)の名を高めたのは、軍事活動・征服戦争だけではなかった。コンスタンティノープルのアヤ・ソフィア大聖堂を再建し、ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会を完成させ、歴史ある古代ローマの法を整理せいて「ローマ法大全」を編纂させている。

でも、地中海各地で征服戦争を行い、領土を広げてかつての古代ローマ帝国の隆盛を取り戻そうとしたユスティニアヌス1世(大帝)の成功こそが、以後の東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の沈滞・衰退を招いたという説もある。征服は防衛費を増加させ、軍事費の増大は財政の悪化を招き、増税は経済を疲弊させ、兵力拡大は軍の中での蛮族の比重を拡大し ・・・ などなど、色々と言われているね。

ところで、上のモザイク画の中で皇帝の左隣に描かれている将軍ベリサリウスなんだけど、素晴らしい功績を残している。ニカの乱を鎮圧し、北アフリカではヴァンダル族との戦いに勝利を得て、イタリアではナポリやローマを攻略し、ペルシャの侵入を防いだらしい。ところが、晩年には乞食になっていたという話があるほど不遇だったそうな。真偽は不明だけど。

ユスティニアヌス1世(大帝)の皇妃テオドラのモザイク画

ユスティニアヌス1世(大帝)とベリサリウスの話が長くなってしまったけど、もう一つ見逃せないモザイク画が下の画像なんだ。

イタリアの古都ラヴェンナのサン・ヴィターレ教会にある東ローマ帝国(ビザンティン帝国)の皇帝ユスティニアヌス1世(大帝)の皇妃テオドラと侍女たちを描いたモザイク画

上の画像の左から3人目に描かれているのは、ユスティニアヌス1世(大帝)の皇妃テオドラなんだそうな。皇妃は皇帝よりも20歳も若く、しかも踊り子だったと伝えられている。でも、そんな皇妃が皇帝を救ったこともあるとか。

ニカの乱と皇妃テオドラ

ユスティニアヌス1世(大帝)の即位から5年後の西暦532年、首都コンスタンティノープル(今のトルコのイスタンブール)で「ニカの乱」と呼ばれる反乱が起きた。首都を脱出しようとする皇帝を思いとどまらせたのが、皇妃テオドラだったそうな。やがて皇帝は将軍ベリサリウスなどに命じて反乱を鎮圧させ、危機を脱することができたらしい。

ちなみに、このニカの乱の際の火災によって焼失したのがアヤ・ソフィア大聖堂だった。その再建が完了したのが西暦537年なんだけど、ユスティニアヌス1世(大帝)は古代イスラエル王国のソロモン王の神殿にも勝るものを建てることが出来たと誇ったらしい。


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