東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「エミリア・ロマーニャとトスカナ(イタリア)」

16. 古都ラヴェンナにある皇女ガッラ・プラキディア廟

古都ラヴェンナにある悲劇の皇女ガッラ・プラキディアの廟

5-6世紀のモザイク画(その中には東ローマ帝国皇帝ユスティニアヌス1世夫妻を描いたものもある)を残すサン・ヴィターレ教会の隣に、小さな建物(下の画像)がある。

イタリアの古都ラヴェンナにある西ローマ帝国の悲劇の皇女ガッラ・プラキディアの廟

これが数々の悲劇の主役を務めた西ローマ帝国末期の悲劇の皇女ガッラ・プラキディアラヴェンナに遷都した皇帝ホノリウスの異母妹)の廟だとされてきた建物なんだ。もちろん、古都ラヴェンナの世界遺産の一つになっている。

この建物は、4本の腕の長さが等しいギリシャ十字型の集中式建築の典型だとされている。古代ローマ人の集会場などに起源を持つバシリカ様式の建物とは異なり、ヘレニズム建築やユダヤ教のシナゴーグなどの建築の伝統を伝える様式なんだそうな。

このガッラ・プラキディア廟は5世紀前半に皇女ガラ・プラキディアによって建てられたとされているんだけど、その当時のものと思われるモザイク画が極めて良い状態で残っている。つまりはイタリアの古都ラヴェンナでも最古のものを見ることが出来るわけだ。

ガッラ・プラキディア廟のモザイク画「水盤から水を飲む鳩」

この小さな建物は、ガラスではなく薄いアラバスター(雪花石膏)の窓を通して日光を取り入れている。その薄明かりの中にはいくつものモザイク画が浮かび上がっているんだ。

そんなガッラ・プラキディア廟のモザイク画の一つが下の画像にある「水盤から水を飲む鳩」なんだ。その左右に描かれているのは聖人と考えられているけど、誰なのかはわからないらしい。

イタリアの古都ラヴェンナにある西ローマ帝国の悲劇の皇女ガッラ・プラキディアの廟にあるモザイク画「水盤から水を飲む鳩」

モザイク画「水盤から水を飲む鳩」についての資料によれば、この鳩は魂を象徴しているんだそうな。対して、水が象徴しているのは癒しと平和。つまり、このモザイク画が示しているのは、永遠の命の水で魂の渇きを癒すことなんだそうな。

ちなみに、同様の絵柄のモザイク画をナポリの国立考古学博物館で見ることが出来る。この博物館には古代ローマ時代に火山の噴火で埋もれたポンペイの遺跡からの発掘品も多く展示しているんだけど、その中にあるポンペイのモザイク画の中に同様のモチーフのものがある。古代ローマ人たちは癒しを求めていたのかな。

天井に輝く十字架と星のモザイク画

続いては、ガッラ・プラキディア廟の天井に輝く十字架と星のモザイク画が下の画像なんだ。

イタリアの古都ラヴェンナにある西ローマ帝国の悲劇の皇女ガッラ・プラキディアの廟の天井にある輝く十字架と星を描いたモザイク画

この古都ラヴェンナのドゥオモの隣にある大司教館付属博物館の中の聖アンドレーア礼拝堂の中にも同様に黄金に輝く十字架と星のモザイク画があったね。

モザイク画「良き羊飼いの図」

もう一つ私の気に入りのモザイク画は、下の画像にある「良き羊飼いの図」。建物の中は暗いけど、このモザイク画は明るいよね。次第に「死」を教義の中心にしていくキリスト教なんだけど、この時代に描かれるキリスト教は暖かいよね。地上に生きる者たちを導いているよね。

イタリアの古都ラヴェンナにある西ローマ帝国の悲劇の皇女ガッラ・プラキディアの廟にあるモザイク画「良き羊飼いの図」

ところで、このガッラ・プラキディア廟なんだけど、最近の研究では皇女ガッラ・プラキディアの遺骸はこの建物ではなく、ローマにあるサン・ピエトロ大聖堂近くの墓地に葬られたとされている。この建物を建てさせたのは彼女だったらしいけどね。

では、この廟に葬られたのは誰なんだろうか。あっけなく滅亡した西ローマ帝国の廟がこの建物のようにも思えるよね。


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