東西南北 春夏秋冬
ヨーロッパの旅
エミリア・ロマーニャ と トスカナ (イタリア)
1999 年 6 月
ガラ・プラキディア廟
(あるいは、ガッラ・プラチディア廟)
5−6 世紀のモザイク画に飾られた聖ヴィターレ教会の敷地の中に、小さなギリシャ十字架型の建物がある。
それが、数々の悲劇の主役を務めた西ローマ帝国末期の皇女ガラ・プラキディアの廟だと信じられてきた。
集中式建築 と ギリシャ十字型建築
古代ローマ人の集会場に起源を持つバシリカ様式の建物とは異なり、ヘレニズム建築やユダヤ教のシナゴーグなどの建築の伝統を伝える建築の様式。
集中式の建築物には、洗礼堂や霊廟などの特殊で小型のものが多い。
上の画像に見るガラ・プラキディア廟は、四本の腕の長さが等しいギリシャ十字型の集中式建築の典型的な例だとされている。
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このガラ・プラキディア廟には、5世紀前半のものと推測されるモザイク画が残っている。古いモザイク画が数多く残るラヴェンナに於いても、最古のものがここにあるわけだ。
水盤から水を飲む鳩
小さな建物は、ガラスではなく薄いアラバスター(雪花石膏)の窓を通して日光を取り入れている。その薄明かりの中には、いくつものモザイク画が浮かび上がっている。
その中で、小さいながらも見落とせないのは、「水盤から水を飲む鳩」と呼ばれているモザイク画(右の画像)。
中世ヨーロッパの美術において、鳩は聖霊の象徴とされている。しかし、このモザイク画の中の鳩は、聖霊には見えないよね。むしろ、ありきたりの生き物。中世ヨーロッパでキリスト教に捧げられる前の写実的な心が、この5世紀前半には生き残っているみたいだ。
と勝手な解釈ばかりでもしょうがない。資料を読めば、鳩は魂を象徴しているんだそうな。対して、水が象徴しているのは癒しと平和。つまり、このモザイク画が示しているのは、永遠の命の水で魂の渇きを癒すことなんだそうな。
良き羊飼いの図
もう一つの好きなモザイク画は、「良き羊飼いの図(下の画像)」。建物の中は暗いんだけど、このモザイク画は明るいでしょ。次第に「死」を教義の中心にしていくキリスト教なんだけど、この時代に描かれるキリストは暖かいよね。地上に生きる者たちを導く存在だったのかな。
ところで、この「ガラ・プラキディア廟」。最近の研究では、ガラ・プラキディアの遺骸はローマのサン・ピエトロ大聖堂近くにある墓地に葬られたとされている。この小さな十字架型の建物の建設を命じたのは彼女だと言われているけどね。
他方、このギリシャ十字型の霊廟に葬られたのが誰なのかは明らかではない。私には、この小さな建物が、あっけなく滅亡した西ローマ帝国のささやかな霊廟のようにも思える。
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