東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「カンパーニャとローマ・ヴァティカン」(イタリア)

第四部 ローマ・ヴァティカン編

D28. ベルニーニの聖ペテロの司教座(カテドラ・ペトリ)

ベルニーニによる聖ペテロの司教座(カテドラ・ペトリ)

イタリアの首都ローマのヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の奥に進み、ベルニーニブロンズのバルダッキーノ(天蓋)の脇から最奥部の後陣(アプス)を眺めた様子が下の画像なんだ。

イタリアの首都ローマのヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の後陣の聖ペテロの司教座(カテドリ・ペトラ)

聖ペテロの司教座(早い話が椅子)を中央に取り込んだこの作品も、やはりバロックの巨匠ベルニーニの作品なんだ。但し、中世の人々には聖ペテロに由来すると信じられていたこの「聖ペテロの司教座」なんだけど、20世紀の調査によれば、実は9世紀のものとされている。フランク王国のシャルル禿頭王(皇帝として戴冠を受けたカール大帝の孫)が教皇庁に贈ったものと推測されているらしいよ。

4人の博士に支えられた聖ペテロの司教座

更に後陣(アプス)に近づき、もう少し間近にベルニーニの聖ペテロの司教座を眺めたのが下の画像だ。

イタリアの首都ローマのヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂の後陣の聖ペテロの司教座(カテドリ・ペトラ)

中央に取り込まれた中世の椅子は、4人の博士たちによって支えられている。その4人とは、神学の基礎を築いた聖アンブロシウス(手前左)、聖アウグスティヌス(手前右)、聖アタナシウス(奥左)、聖クリソストムス(奥右)なんだそうな。

ローマ教皇アレクサンデル7世とベルニーニ

イタリアのバロック美術の巨匠となるベルニーニにブロンズのバルダッキーノ(天蓋)を制作させ、ベルニーニを大きく育て上げたローマ教皇ウルバヌス8世は西暦1644年に亡くなってしまった。その後任の教皇インノケンティウス10世は、芸術に熱意を持たず、ローマの美術界の寵児となっていたベルニーニにも不遇の時代がやってきたらしい。

そんなベルニーニを再びローマのバロック美術の柱として復活させたのが、次の教皇となったアレクサンデル7世だった。ベルニーニにサン・ピエトロ広場の設計を依頼し、聖ペテロの司教座の制作を命じたのも、ローマ教皇アレクサンデル7世だった。

イタリアの首都ローマのヴァティカンにあるサン・ピエトロ大聖堂で見たベルニーニの手による教皇アレクサンデル7世の墓

そんなローマ教皇アレクサンデル7世が亡くなった後、その墓(上の画像)を作ったのもベルニーニだった。完成したのが西暦1678年のこと。もちろん、サン・ピエトロ大聖堂の中で見ることができる。

ローマのバロックの衰退とベルニーニの死

ローマ教皇ウルバヌス8世と並んでバロックの芸術家としてのベルニーニを育て上げたとも言える教皇アレクサンデル7世は、西暦1667年に亡くなった。その後継者クレメンス9世は、ベルニーニとは旧知の仲だったこともあり、彼にサンタンジェロ橋の装飾を依頼している。

西暦1670年、ローマ教皇クレメンス10世が即位。教皇庁の財政悪化を食い止めるために、クレメンス10世は芸術関係の支出を削減した。そして西暦1676年に即位した教皇インノケンティウス11世は、更に厳しい緊縮財政を命じ、ベルニーニが計画していたサン・ピエトロ広場の第三の柱廊の建設を中止させたんだ。

教皇庁が緊縮財政を厳しく実施するにつれ、バロック芸術の中心だったローマの活力は衰退し、やがてはフランスの首都パリがバロックの中心となっていった。

そんなローマにおいて、ベルニーニが亡くなったのが西暦1680年11月28日のこと。死の直前、多くの芸術作品を作り上げた彼の右手は麻痺してしまったらしい。そんな右手についてベルニーニは、「長い間働いてきたこの腕が、私よりも先に休むのは当然のことだよ」と語ったんだそうな。

その後、バロック芸術の時代は去り、新古典主義の時代がやって来た。かつてはローマ教皇庁の寵児だったベルニーニの作品は酷評され、「趣味の疫病」とまで言われたんだそうな。そんなベルニーニの作品が再び評価されたのは、20世紀になってからのことだった。


次のページは
「D29. サン・ピエトロ大聖堂に見る聖人・教皇たちの像・墓」



ヨーロッパ三昧 トップ・ページ

ヨーロッパの歴史風景

このサイト「ヨーロッパ三昧」には、下の姉妹サイトもあります。ヨーロッパに興味のある方は寄り道してくださいね。

ヨーロッパの歴史風景 バナー このサイト「ヨーロッパ三昧」の姉妹サイト「ヨーロッパの歴史風景」。ヨーロッパ各国の歴史に重点を置いてある。



Copyright (c) 2002-2013 Tadaaki Kikuyama
All rights reserved
このサイトの画像 及び 文章などの複写・転用はご遠慮ください。

このサイトの運営は、あちこち三昧株式会社が行います。