東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「カンパーニャとローマ・ヴァティカン」(イタリア)

第四部 ローマ・ヴァティカン編

D55. ベルニーニの「プロセルピナの略奪」

ベルニーニ 「アエネアスとアンキセス」

ボルゲーゼ美術館に見るベルニーニの「アエネアスとアンキセス」(ローマ、イタリア) 枢機卿シピオーネ・ボルゲーゼの制作依頼を受けた若き日のベルニーニの作品がボルゲーゼ美術館に幾つも残されているんだけど、その一つが右の画像にある「アエネアスとアンキセス」だね。

西暦1618年頃、つまりベルニーニが20歳の頃に制作を始めたこの作品が描いているのは、ギリシャ軍の「トロイの木馬」の計略によって落城するトロイの街を脱出するアエネアスとその肩の上に載る老父アンキセス、幼い息子アスカニウスの三人。

この三人の構図は、ヴァティカン博物館・美術館の中の「火災の間」に残るラファエロの工房による作品「ボルゴの火災」に描かれた人々に良く似ている。若き日のベルニーニがルネッサンス期の芸術の影響を受けたことがよくわかる作品だよね。

余談ながら、このアエネアス(あるいはアエネイスとかアエネアイス)の悲劇を描いた詩を残したのが、古代ローマを代表する詩人ヴェルギリウスあるいはヴァージル(紀元前 70年 - 19年)だった。

ヴェルギリウスの物語によれば、トロイを落ち延びたアエネアスはイタリアに辿り着き、やがて古代ローマを築くわけだ。上の画像でアエネアスに抱きかかえられた老父アンキセスが手に持っているのは、古代ローマ時代の家の守護神ペナテスなんだそうな。

ベルニーニ 「プロセルピナの略奪」

ボルゲーゼ美術館に見るベルニーニの「プロセルピナの略奪」(ローマ、イタリア) 右の画像は、西暦1621年から1622年頃に制作された「プロセルピナの略奪」(あるいは「プルトンとプロセルピナ」)なんだ。

抱き上げられたプロセルピナの背中から腰にかけてプルトンの指先が食い込んでいる様子が見事だよね。

ちなみに、プルトンというのは地下世界の王の名(別名ハデス)、対してプロセルピナは大地の女神ガイアの娘(別名ペルセポネ)。右の画像を見ればわかるけど、プルトンがプロセルピナを誘拐して連れ去る瞬間が描かれている。

この「プロセルピナの略奪」のお話には続きがある。娘を地下に連れ去られて悲しみにくれる母ガイア(あるいはデメテル)は、全能の神ジュピターに泣きついた。その結果、ジュピターの裁定により、プロセルピナは一年の半分を地下で、残りの半分を地上で過ごすことになったんだ。

地下世界で半年を過ごしたプロセルピナが地上に戻るのは春。大地の女神ガイアの娘にして春の女神・豊穣の女神プロセルピナが地上に戻れば、台地には花々が咲き乱れ豊かな穀物が稔るわけだ。


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