ベルニーニ 「ダヴィデ」ボルゲーゼ美術館に見るバロックの彫刻家ベルニーニの青年時代の作品で、「アエネアスとアンキセス」「プロセルピナの略奪」に続くのは、右の画像にある「ダヴィデ」。西暦1623年から1624年にかけて制作されたこの作品なんだけど、同じくダヴィデをテーマにしたミケランジェロの作品(フィレンツェのアカデミア美術館蔵)とは異なり、今まさに投石をしようとする瞬間を描いているね。先日あるテレビ番組で見たけど、身体をよじったポーズは、筋肉を強調するものなんだそうな。 この「ダヴィデ」のモデルになっているのは、当時25歳前後だったベルニーニ自身だったとか。(このボルゲーゼ美術館には、同時期のベルニーニの自画像も残っている。) 余談ながら、このダヴィデ像を制作中のベルニーニのアトリエを、枢機卿マッフェオ・バルベリーニが訪れた。枢機卿は自分自身をモデルにダヴィデを制作しているベルニーニの為に、鏡を持ってやったんだそうな。 このダヴィデが完成した西暦1623年、ベルニーニの為に鏡を持ってやった枢機卿マッフェオ・バルベリーニがローマ教皇ウルバヌス8世として即位した。そして、新教皇はベルニーニにサン・ピエトロ大聖堂にあるブロンズのバルダッキオ(天蓋)の制作を依頼しているんだ。 ベルニーニの「アポロとダフネ」上に御紹介したダヴィデ像よりも前に制作を開始し、西暦1625年にやっと完成したベルニーニの作品がある。それが、彼の若き日の傑作の一つと言われる「アポロとダフネ」あるいは「アポロンとダフネ」(下の画像)なんだ。ある日、若きアポロ(アポロン)は、イタズラなキューピッドによって黄金の矢を射られてしまった。その矢には、恋心を生む魔法がかけられていたんだ。そして、アポロはダフネに恋をし、彼女を追いかけまわす。 ところがダフネは鉛の矢を射られていた。鉛の矢には、恋を嫌う力が秘められていたんだ。そして、追いまわすアポロから美女ダフネは逃げまわる。 ところがアポロは俊足だった。古代ギリシャのオリンピックで最初の金メダルの受賞者だからね。やがてアポロは美女ダフネをつかまえてしまう。「男の心を惑わすこの姿を変えて私を滅ぼしてください」とダフネは神に祈った。 その結果、美女ダフネの髪の毛は木の葉となり、腕は小枝となり、すらりと伸びた足は木の根となり、彼女は月桂樹になってしまった。ベルニーニが表現したのは、月桂樹に変る瞬間の美女ダフネの姿だった。
All rights reserved このサイトの画像 及び 文章などの複写・転用はご遠慮ください。 このサイトの運営は、あちこち三昧株式会社が行います。
|