サン・ドニ大聖堂はフランス王家の墓所フランスの首都パリの郊外にあるサン・ドニ大聖堂は、フランス王家の墓所にもなっている。この点はイギリスの首都ロンドンにあるウェストミンスター寺院と同じだね。でも、イングランド王たちは征服王ウィリアム1世(ノルマンディー公ウィリアム)にしてもプランタジネット家のヘンリー2世にしても、王家の墓所であるウェストミンスター寺院で戴冠してきた。対してフランス王たちは、このサン・ドニ大聖堂ではなく、ランスにあるノートルダム大聖堂で戴冠することが伝統だった。 それはともかくとして、このパリ郊外のサン・ドニ大聖堂はフランス王家の墓所だった。そんなサン・ドニ大聖堂の中には、昔のフランス王たちの墓も残されているんだ。
例えば、上の画像はフランス王ルイ12世と王妃メアリー・テューダーの墓。フランス王ルイ12世は、ロワール川のほとりのブロワ城(彼が生まれた場所でもある)に住んだ王様だね。王妃メアリー・テューダーはイングランド王ヘンリー7世(ヘンリー・テューダー)の王女でヘンリー8世の妹だった。
余談ながら、フランス王フランソワ1世の王妃でルイ12世の娘のクロードの侍女の中には、後にイングランド王ヘンリー8世と結婚してテムズ川のほとりのロンドン塔で幽閉・処刑されたアン・ブーリンがいたんだ。上に書いたメアリー・テューダーがルイ12世に嫁いだ関係でイングランド人のアン・ブーリンが侍女としてフランスに来ていたという説もあるらしいよ。
話を王家の墓所に戻そう。フランス王フランソワ1世と敵対したハプスブルク家の皇帝カール5世なんだけど、ベルギーに生まれ育って、流暢なフランス語を話し、何度も来たパリが大好きだったらしい。彼はスペイン南部アンダルシア地方の古都グラナダに王室礼拝堂を建て、そこをスペイン王家の墓所にしようとしたんだそうな。パリ近郊のサン・ドニ大聖堂のフランス王家の墓所を見て、その影響を受けたのかもしれないね。但し、彼の息子のスペイン王フェリペ2世はマドリッドにも近いエル・エスコリアルを王家の墓所にしちゃったらしいけど。
サン・ドニ大聖堂にあるフランス王家の墓所とフランス革命先にも書いたけど、フランス革命の混乱の際にはサン・ドニ大聖堂のバラ窓などのステンド・グラスが破壊されたりしている。(イギリスの清教徒革命の際にもチェスター大聖堂のステンド・グラスが破壊されたらしい。革命は文化や芸術の破壊を伴ってしまうんだね。)そんな革命の嵐は、当然ながらフランス王家の墓所にも及んでいる。このサン・ドニ大聖堂の中にあった歴代のフランス王や王妃たちの墓は暴かれ、遺骨などは大きな穴にまとめて放り込まれたらしい。他方でサン・ドニ大聖堂(当時は修道院付属教会だったけど)は閉鎖された。 そんなこんなに伴い、墓所にあった王や王妃たちの像や墓碑なども打ち捨てられ、破壊されそうになっていた。それを救ったのが考古学者ルノワールだった。博物館に展示するという目的を持ち出し、彼は王たちの像などを破壊から守ったんだそうな。 その後、フランス皇帝となったナポレオンは、西暦1806年にサン・ドニ大聖堂の再開を認めた。でも、まとめて穴に放り込まれた歴代のフランス王たちの遺骨はそのままに放置されたんだそうな。 そして西暦1814年にはフランス皇帝ナポレオンが退位し(翌年には百日天下もあったけど)、ブルボン家の王政復古となった。そしてフランス王ルイ18世の命によって、歴代の王たちの遺骨が放り込まれた穴が開かれたんだ。でも、どれが誰の遺骨なのかわからない。 というわけで、その穴から引き揚げられた王たちの遺骨はサン・ドニ大聖堂の地下のクリプトに設けられた納骨堂に納められたらしい。そこには大理石に王や王妃、王室の人々の名前が刻まれている。
マリー・アントワネットとフランス王ルイ16世の像そんな歴史のあるサン・ドニ大聖堂の一角には、フランス王ルイ16世とマリー・アントワネットの像(下の画像)もある。
フランス革命において、フランス王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットが処刑されたのは西暦1793年のことだった。そして二人の遺体はマドレーヌ墓地(やがて廃止され、ルイ16世広場となった)に埋葬されたらしい。
ルイ16世とマリー・アントワネットの墓
サン・ドニ大聖堂の片隅にある階段を下り、地下にあるクリプトに足を踏み入れる。そこに処刑されたフランス王ルイ16世とマリ・アントワネットの墓(下の画像)がある。 |
マリー・アントワネットの遺体と墓碑サン・ドニ大聖堂の墓所にルイ16世夫妻の墓もありますが、あのアントワネットの像は、ルイ16世の妹さんがモデルなんですよ。彼らの死体は、処刑後しばらくパリのマドレーヌ墓地に埋められていたそうです。もうないパリのマドレーヌ墓地ですが(マドレーヌ寺院はまだある)、ここにはルイ16世夫妻を始め、ギロチンで処刑された死体が暫く放っぽり出されていた事もあったので、想像すると何か恐いものもあります。 |
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