東西南北 春夏秋冬 ヨーロッパの旅

旅行記 「エミリア・ロマーニャとトスカナ(イタリア)」

43. ようやく到着した中世の塔の街 サン・ジミニャーノ

ようやく到着したサン・ジミニャーノ

シエナから乗る列車を間違えて反対方向に行ってしまい、田舎の駅の前にあるさびれたバーで時間をつぶし、次の列車でシエナに戻ってきた。そのシエナからエンポリ行きの列車に乗り込む。今度こそ間違いない。駅員さんに二度も確認したんだ。

イタリア北部略図、中世の塔の街サン・ジミニャーノとその周辺

やがて到着したポッジボンシ駅で下車。その駅前にはタクシーは見当たらない。が、ちょうどサン・ジミニャーノ行きのバスが停車している。重いスーツ・ケースを持ってバスに乗るのは大変だけど、歩いて行くわけにもいかないからね。とにかくバスに乗り込む。

中世の塔の街サン・ジミニャーノの中世の城門

やがて私たちを乗せたバスは終点に到着。ようやく中世の塔の街サン・ジミニャーノに到着した。長い旅だったね。

中世の塔の街サン・ジミニャーノにあるサン・ジョヴァンニ門(イタリア)

バスが停車したのは上の画像の城門の前だった。サン・ジョヴァンニ門と呼ばれるこの城門は、西暦1262年に築かれたものなんだそうな。なるほど、さすがは中世の塔の街と呼ばれるサン・ジミニャーノだね。

ところが今日の艱難辛苦はまだ続く。バスが停まった城門から予約をしてあるホテルまでは数百メートルの登り坂なんだけど、それが石畳の道だった。つまり、スーツ・ケースの車輪は全く役に立たなかった。そのスーツ・ケースの重かったこと。ホテルに着いた時の私は汗だくになっていたよ。

サン・ジミニャーノの街並みの上から見下ろす中世の塔

でもね、重いスーツ・ケースを持ち上げて歩きながらも、サン・ジミニャーノの街並みの上から私たちを見下ろしていたのは、下の画像のような中世の塔だったんだ。

中世の塔の街サン・ジミニャーノに残る塔の一つ(イタリア)

おかげで念願の中世の塔の街にやって来たという実感がわいたね。石畳の登り坂にくじけることなく、スーツ・ケースを抱えてホテルまでたどり着くことができたよ。

14本もの中世の塔がそびえるサン・ジミニャーノ

このサン・ジミニャーノの街には14本もの中世の塔がそびえているらしい。明日はその眺めを堪能する予定なんだ。ところで、何故にこのサン・ジミニャーノには多くの中世の塔が立っているんだろうか。

かつて中世のサン・ジミニャーノはフランチジェーナ街道の街として栄えたらしい。フランチジェーナ街道というのは、イングランド南部にあるカンタベリーからローマサン・ピエトロ大聖堂に至る巡礼の道だった。例えば西暦990年にはカンタベリー大司教に任じられたシゲリックがローマに赴き、教皇から大司教の肩衣を授かったりしたそうな。そんな街道を歩く多くの人々がサン・ジミニャーノに立ち寄り、泊まったりしたわけだ。

更には街道の街サン・ジミニャーノは交易の街でもあった。衣服の染料として、あるいは料理の香味料として使われるサフランはサン・ジミニャーノのある丘で栽培され、街の特産品となっていたらしい。加えて、ヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノと呼ばれる特産の白ワイン(同じくトスカナのキャンティは赤ワイン)も有力な交易品だった。

ちなみに、ルネサンスの芸術家ミケランジェロはこのヴェルナッチャ・ディ・サン・ジミニャーノが大好きだったそうな。また「神曲」を著したダンテもこのワインを愛飲したらしい。

やがて西暦1199年にはサン・ジミニャーノは自治都市としてヴォルテッラの司教の支配を脱し、更なる発展を始めた。ところが、市の内部での争いが激しくなり、有力な人々は競って塔を建てたそうな。守りを固める為であり、あるいは勢力を誇示する為だった。最盛期にはサン・ジミニャーノの街には 72本もの塔が林立していたらしい。

ところが、西暦1347年にフランス南部プロヴァンス地方港町マルセイユに上陸した黒死病(ペスト)が翌年にはイタリアでも流行し、シエナと同様にサン・ジミニャーノの街も人口の半分を失ってしまった。その結果、沈滞に陥ったサン・ジミニャーノはフィレンツェに従属したわけだ。

その後のサン・ジミニャーノは衰退するばかりだった。その結果、中世の塔を解体する必要が生じなかったどころか、むしろそれを解体する費用を負担することも出来ないほどだった。でも、そのおかげで現代の私たちは中世の塔の街サン・ジミニャーノを歩くことが出来るわけだよね。もちろん、サン・ジミニャーノ歴史地区は世界遺産となっている。


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